歴史と活動

学生相談部門の歴史と活動

当学生相談部門は、日本の大学の中でも最も長い歴史をもつ学生相談機関の1つです。学生懇話室と呼ばれていた時代からの歴史をひもときつつ、現在にいたるまでの活動を簡単に紹介します。

学生相談部門の歴史

現在の学生相談部門は、障害学生支援部門とともに、学生総合支援機構を構成しています。2022年4月1日に、旧学生総合支援センターを改組し、旧学生総合支援センターのカウンセリングルーム、キャリアサポートルームおよび障害学生支援ルームの機能を再編・移行し、新たに学生総合支援機構が設置されました。

当学生相談部門は、旧学生総合支援センターカウンセリングルームの機能に加えて、旧環境安全保健機構(保健診療所)や旧学生総合支援センターキャリアサポートルーム、留学生相談室などの一部機能を引き継いでいます。
旧学生総合支援センターカウンセリングルームは、2013年8月1日に、旧カウンセリングセンターから、キャリアサポートセンター、障害学生支援室を統合する形で改組され、学生総合支援センターとなりました。
さらにその前身の旧カウンセリングセンターは、1999年6月1日に、それまでの学生懇話室の業務・スタッフ・設備をすべて引き継ぎつつ、発展的に改組され設立されました。
京都大学における学生相談サービスの源流は学生懇話室の設立に遡ります。そこで、ここではまず学生懇話室の歴史を紹介することから始めます。

学生懇話室の開設

戦後間もなくの日本の大学は、アメリカから導入された新しい高等教育の理念に導かれ、厚生補導の活動(Student Personnel Services、略してSPS)を整備しつつありました。学生相談の機関は、SPSの重要な機能を担うものと考えられるものです。そんな中、京都大学の学生懇話室は1956年の4月24日に開設されました。

開設を承認するに当たり、評議会に提出された資料には、その目的が以下のように述べられています。

  1. 多数の学生に対して、教官の面接、助言が徹底しがたい現実に鑑み、まずひろく教官との面接、懇談、助言の門戸を開く。秘密を厳守して学生個人の生活上のすべての問題の相談に応じ、しこうして問題解決に必要なる限り、学内のあたう限りのスタッフの協力を得て、学生の自主的問題解決への援助を行う。
  2. 総合大学の特色を活かして、懇話委員以外の教官と学生との接触交流を深めるように適切な面接、懇談の機会を設ける。
  3. 懇談助言の際、学生の自主的選択を適正ならしめるために必要なる資料をあたう限り準備する。例示すれば、イ.各学部各学科コースの内容紹介に関するもの;ロ.職業選択に関するもの(職業分布、待遇、先輩、就職試験等)等。
  4. 精神衛生的問題行動(自殺、家出等)を惹起した学生の事例研究をより詳細に行う。
  5. 精神衛生的問題に悩む学生のためには、本人の求めに応じて臨床心理学的・精神医学的分析、治療指導をも併せ行うことがある。

専任の相談担当教官は2名でしたが、各学部等から選ばれた学生懇話委員も毎週1回2時間の相談を担当しました。1956年の6月1日から実際の相談業務を開始して、その年度の末までの間に、西部構内懇話室に145名、宇治分校内懇話室に105名、合わせて250名の来談者があり、延べ面接回数は420回にのぼりました。当時の在籍学部学生数は6381名でしたから、来談率は3.91%であり、これは最近の傾向と比べると高い数字になっています。

学生懇話室の相談活動の実績

以来、1999年にカウンセリングセンターに改組されるまで、学生懇話室は京都大学の学生の相談機関として活動を続けてきました。学生懇話室には、毎年約400~500人が相談に訪れるようになり、延べ面接回数は3000回に上るようになりました。

またこれら個別相談以外の学生懇話室の活動としては、青年期の問題について啓発的なテーマを設けての公開シンポジウム(保健管理センターとの共催で毎年秋に開催)、全学共通科目の人間関係論(集中講義)、学生相談に関わる研究会議、などを企画・運営してきました。

カウンセリングセンターへの改組

学生懇話室は、1999年6月1日をもってカウンセリングセンターへと名称を変え、発展的に改組されました。

学生総合支援センターへの展開

そのカウンセリングセンターは、さらに2013年8月1日をもって改組され、キャリアサポートセンター、障害学生支援室と統合され、1部局2部門を統合した学生総合支援センターとして設立されました。キャリアの悩み、障害の悩みも含めて、多様な学生生活上の悩みにより総合的に効果的に関わっていけることを目指して、組織を再編したものでした。

学生総合支援機構への飛躍

そして、2022年4月1日、さらに学生総合支援センターを改組し、学生相談部門および障害学生支援部門からなる学生総合支援機構が設置されました。これは、学生総合支援センターのカウンセリングルーム、キャリアサポートルームおよび障害学生支援ルームの機能を再編・移行するとともに、学生相談部門においては、旧環境安全保健機構(保健診療所)や留学生相談室などの一部機能を統合し、各構内・キャンパス(吉田、吉田南、北部、桂、宇治)に学生相談部門の教員およびスタッフで構成する5つの相談室を設置し、心身の健康やキャリア、教務等に関する幅広い相談を一元的に実施することを目指したものです。

各構内・キャンパスに相談室を設置することで相談室へのアクセスがよりしやすくなり、また、医師(精神科医)、心理士(臨床心理士、公認心理師)、キャリアカウンセラー、養護教諭など多様な専門性をもったスタッフを配置することで、学生の修学上・適応上および進路上の様々な相談にきめ細やかに対応できるよう体制の充実化を図っています。

社会も、大学も、大きく変わりつつある現在において、人間関係の上でも、個人の内的な価値や生き方の上でも、様々な問題や悩みが生じているように思います。これらに圧倒されてしまうことなく、生き生きとしたキャンパスライフを実現していく上で、学生総合支援機構 学生相談部門が役に立てればと願っています。