自己理解

高等教育機関において、学生が効果的な修学環境や社会移行のプランを考える際の重要な視点のひとつとして「自己理解」があります。自己理解をすることで、学生は自己の得意・不得意を理解し、必要な工夫を取り入れることや、他者に援助を要請できる可能性がひろがります。本プロジェクトは2つのプログラムで構成されています。

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自己理解セミナー

DRCでは、精神障害や発達障害、その特性傾向がある学生を対象に、2019年度から「社会をみすえた自己理解セミナー」を開催しています。2022年度からは名称を「自己理解セミナー」に変更し、8月は「学生生活編」、2月は「社会移行編」とテーマを分けて実施しています。

セミナーは症状や特性、二次障害といった医学的な個人の状態を知ることにとどまらず、「興味関心」や「得意」に気づき、“苦手”や“困りごと”に対処する工夫を考えるためのきっかけ作りの場となることを目的としています。

※自己理解は大切なことですが、DRCでは、必ずしもそれ自体が物事を進めるために必要な条件や前提であるとは考えていません。環境や社会側のバリアが課題になっていることも多いため、DRCではこれらを総合的に捉えて、且つ本人を中心として対話的に考えていくことで、それぞれの特徴や困難さ、そして必要な対策やリソースを考えていきたいと思っています。

セミナーでは自己理解の意義や目的を解説し、ワークシートへの回答を通して現在の修学場面や生活場面をふり返ります。そこから自身の得意・不得意や体調の波、日常の困りごとなどを整理し、学生生活や将来の社会進出場面で活用できる工夫やリソースについて考えます。頭では概念を理解することができても、自分のことを実感をもって理解したり、多方面から考えたりすることに苦手意識を持っている学生も多いため、セミナー後には担当コーディネーターが面談にてアフターケアをしています。

2023年度のセミナーの様子

アセスメントを活用した自己理解プログラム

発達障害や特性傾向がある学生を対象として、複数の評価尺度を用いて自己理解を深めるための機会を提供します。学生自身が参加を希望することに加え、本プログラムが断片的・単発的な取り組みになってしまわないように、以下に示す全ての条件を満たす学生を対象として実施しています。

1.京都大学に在籍し、DRCに利用登録している学生
2.発達障害や特性傾向がある学生
3.修学や社会進出にむけて自己理解を希望する学生
4.かかりつけ医療機関(精神科など)がある場合、本取組について説明文を用いて共有し、主治医から参加の許可を得られた学生
5.別途、本プロジェクトの『自己理解セミナー』を受講できる学生

アセスメントには、ベーステストとして以下の検査を使用しているほか、質問紙を用いた健康状態の評価、事前事後の面談・フィードバックを併せて行っています。定期面談においても適宜フォローアップを実施するとともに、概ね半年後に本プログラムの振り返り面談を実施します。

発達障害の要支援度評価尺度(MSPA: Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD

幼少期からの一貫した発達特性の程度と要支援度を評価する検査です。約10分間の事前アンケート記入と、約60分間の面談で構成されています。

職業レディネス・テスト(VRT:Vocational Readiness Test

自己理解と職業探索を目的に実施する検査です。所要時間は約40分間です。

その他、必要であれば学生と相談の上、下記の検査を使用する場合もあります (下記は一例です)

一般職業適性検査(GATB:General Aptitude Test Battery

知的能力や認知、微細運動など9つの適性能を評価する検査です。紙筆検査と器具検査があり、所要時間は約90分間です。

読字・書字課題(RaWF:Reading and Writing Fluency task)
読み書き支援ニーズ尺度(RaWSN:Reading and Writing Support Needs Scale)

RaWFは読字能力と書字能力(ある程度の正確さを持って速く読み書きできる能力)を評価する検査です。RaWSNは現在や過去の学習上の困難についての自己評価者尺度です。双方とも18歳から20代の学生を対象として作成されています。

※上記アセスメントプログラムの内容は2023年6月に内容を更新しました。