コロナ障害学生

Students With Disabilities In The Pandemic

2020 to 2021

About

本企画によせて
村田 淳(「コロナと障害学生」企画ディレクター)

コロナと障害学生。2020年にはじまり、2021年においても社会全体で混乱が続く現状において、このテーマを各論として切り取ることが必要だと、私はなぜ思ったのだろう。

私は大学で、障害のある学生のことを考える仕事をしている。学生の権利や尊厳と向き合って、大学や社会としてのあるべき姿を探す仕事だ。いつしか障害学生支援と呼ばれるようになったこの領域だが、客観的に言って、未だ高等教育という世界においてその存在は安定したものではなく、揺れながらその存在の位置づけを探している途上にある。

2020年の春、大学は混乱した。日常と冷静さ、そして信じてきた正解を失ったこの状況は、高等教育というものを根本から問い直したというと大袈裟だろうか。ただ、少なくとも障害学生支援においては、現実と向き合いながらも歩みを止めるわけにはいかず、手探りで今日と明日のことを考え続ける日々が始まり、これまでの行為やプロセスを改めて問い直している現実がある。

この中で、変わるなにかと変わらないなにかが障害学生支援という定点観測の視界を行き来する。どこにたどり着くかわからないが、この瞬間を残す必要があると思った。アーカイブなのか、ルポタージュなのか、クロニクルなのか、それは後からしか評価できないかもしれないが、その役割を一人のライターに託すことにした。

最前線で起きていること、学生や支援者が感じたことを切り取る。このプロセスを一人称で語るという手法により、体温を感じながら揺れる社会に対する人の思考や営みをすくい取っていく。その上で、大学のこと、障害のこと、支援のこと、そして社会のことをもう一度問いたいと思った。なにが見つかるかわからないが、この企画が必要だと思った初期衝動の手がかりくらいにはたどり着くはずだ。

2021年1月

ディレクター:
村田 淳(高等教育アクセシビリティプラットフォーム[HEAP]ディレクター)

1981年、京都府生まれ。京都大学学生総合支援センター准教授、障害学生支援ルームチーフコーディネーター。2007年より、京都大学における障害学生支援に従事。組織的な支援体制の構築や合理的配慮の提供に関するシステムを構築する一方、支援現場で様々な取り組みを行う。全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)の理事など、対外的な活動も担いつつ、日々、大学における障害学生支援のコーディネーターとして従事する実践家。

取材・執筆:
木谷 恵(執筆業)

1984年、大阪府生まれ。京都府立大学公共政策学研究科博士前期課程修了(公共政策学修士)。大学院修了後、自立生活支援センターで重度身体障害者の24時間介助に従事する。2013年〜2016年、社会福祉法人オリーブの会との共同プロジェクト「ドニさんの家」を主催。2014年より立命館大学、京都大学にて障害学生の支援を行うコーディネーター職を務める。2020年にフリーランスとして独立。京都府北部の山あいにて、障害などをテーマに執筆を行う。

運営:
高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP)
Higher Education Accessibility Platform

2017年度、京都大学にて発足。高等教育における障害学生支援プラットフォームの形成に取り組むプロジェクト。障害のある学生の学生生活における支援の関わりを、「高校からの移行」「在学中」「社会への移行」の3つのフェーズに分け、それぞれの局面で効果的な支援の取り組みが行われることを目指して、様々なプログラムを実施。

お問い合わせ:
高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP)
heap@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp