岡山県 障害学生支援ネットワーク形成の流れ《大学コンソーシアム活用型・アンブレラ型》 面積:7,114.32㎢ 総人口1,891,346人(2019年10月現在) 国立大1、公立大2、私立大14、公立短大2、私立短大7、国立高専1 【フェーズ1:ネットワーク形成以前】 ●2006年以前 1)高等教育機関間の連携なし 2)障害学生支援の実施/不実施は個々の大学の判断による。 ↓ ネットワーク形成に間接的な影響を及ぼしている岡山県の課題 ・県内で障害学生支援の専門スタッフや専門部署を配置している機関が少ない。 →県内で障害学生支援の専門スタッフや専門部署を配置している機関も少なかったことから、互助的に情報交換を進めるため、コンソーシアム内で障害学生支援委員会が設置された。 【フェーズ2:ネットワーク整備期】 <できごと> ●2006年 大学コンソーシアム岡山設立 ●2012年 大学コンソーシアム岡山「3事業実施体制」開始 ●2013年 大学コンソーシアム岡山「障がい学生支援委員会」設置、「障がい学生支援研修会」開始 <ネットワーク化の進展> 1)障害学生支援の専門スタッフや部署を配置している機関は限られていたが、コンソが窓口となることで、情報の共有が図られた。 2)障害学生支援の全体的レベルの底上げを図る。県内の諸課題を討議、研究する機会を得ることができ、地域全体の課題解決へ寄与できるようになる。 <県内への波及効果> 1)「障がい学生委員会」は年に3回開催。各大学の障害学生支援の現状や取り組みについて状況共有を行い、地域全体の課題解決へと寄与。 2)「障がい学生支援研修会」は年に1回開催。初等中等関係者を含む100人以上が参加し支援レベルの全体的な底上げに寄与。 【フェーズ3:ネットワーク拡充期】 <できごと> ●2017年 1)「障がい学生支援に関する各大学の情報共有専用サイト」を設置 2)岡山県WEBサイトに「障がいのある学生への支援窓口」を掲載 ●2018年 1)就労支援「社会への一歩サポートセミナー」を実施 <ネットワーク化の進展> 1)コンソが事務局/窓口を担うことで行政や県教育委員会等との連携がとりやすく、一大学だけでは解決できない課題にも取り組めるようになる。 <県内への波及効果> 1)県の教育リソースの拠点として総体が見えやすくなる。要支援者への一括した情報発信が可能。 2)各大学等の支援者間でのノウハウ共有が可能に。 【将来像】 ・地域の中でプラットフォームを担う存在が必要な状態。当面は均等な底上げをするために底を引き上げる存在=専門知を提供し、牽引を担う役割の明確化が必要。 ・特定機関(大学コンソーシアム)のリソースを中心に据えるアンブレラ型の連携モデルの強化を図る。それぞれの高等教育機関の特色を生かせるように留意する。 【岡山県モデルのGood Point】 ・県内ほとんどすべての高等教育機関が加盟する既存のネットワークである大学コンソーシアムの枠組みを活用したため加盟校の参加が容易であった。また、行政、教育委員会、その他社会資源との連携も比較的容易に進められるようになった。 ・初等・中等教育段階の関係者(高大接続)、就労に向けた移行支援の関係者(社会移行)の参加がみられ、県の総体(教育リソースの拠点)」としての位置づけを獲得することができた。 岡山県における障害学生支援ネットワーク形成の流れ 1.県概要 ・岡山県人口:約180万人(岡山市:72万人、倉敷市:48万人など) ・高等教育機関:18機関(国立校1校、県立校2校、私立校14校、高等専門学校1校) →多くが岡山市と倉敷市にある。他と比較すると国立校1校の規模が大きい。 ・大学コンソーシアム岡山: 2006年に設立。2012年より3事業(大学教育事業・社会人教育事業・産官学連携事業)で取組を行っている。 2.ネットワークの形成にあたって ・県内で障害学生支援の専門スタッフや専門部署を配置している機関が少ない。 →県内の大学を並列(互助的)で扱うのは実態として難しく、自然と専任教員を配置している国立校の負担感が高まる。 ・2013年に大学コンソーシアム岡山内に障がい学生支援委員会が設置された。 3.ネットワークの運用の状況 ・障がい学生支援委員会の設置以降、年に1回「障がい学生支援研修会」と年3回「障がい学生支援委員会」を定期的に開催している。 →「障がい学生支援研修会」では、参加者は100人以上と間口を広げて障害学生支援の全体的レベルの底上げをはかっている。 →「障がい学生委員会」では、各大学の障害学生支援の現状や取り組みについて状況共有を行っている。各校担当職員の専門的知識が不足していることも多く、実態として国立校専任教員が理念的な部分も含めて、基礎的事項に関して情報提供することが多い。また、県内の障害学生支援を取り巻く諸課題を吸い上げながら研究を進めることで地域全体の課題解決へと寄与している。 ・大学コンソーシアム岡山が事務局/窓口を担う。 →ネットワーク運営に関する負担の軽減 4.県ネットワークの意義・メリット ①県内の関係者全体が助かる。 →各大学等の支援者間でのノウハウ共有 例)大学コンソーシアム岡山の事業WEBサイトの中に「障がい学生支援に関する各大学の情報共有専用サイト」(2017年度~) →大学コンソーシアム岡山が事務局/窓口を担うことで、行政や県教育委員会等との連携がお互い取りやすく、1つの大学の動きでは解決ができない、地域全体の課題にも取り組みやすい。 例)高大接続:岡山県WEBサイトに私立大学を含んだ「障がいのある学生への支援窓口一覧(入試 or 修学支援)」(2017年度~)を掲載している。 例)就労支援:「社会への一歩サポートセミナー」(2018年度~)、対象を大学生に限定せず、幅広く対象とすることで県内の就労移行支援事業所等の利用者にもメリットが生まれる。 ②「県の総体(教育リソースの拠点)」として見えることの価値 →1大学の意見では参考意見に過ぎないが、連合していくことでアプローチがしやすい。 例)大学における重度訪問介護対象者の修学支援調査・結果まとめ(2018年)を行い、公的福祉サービスの積極的な運用に関して市町村への提言・情報提供を行うことができた。 公開日:2020年3月 発行:京都大学HEAP