長崎県 障害学生支援ネットワーク形成の流れ《独自ネットワーク形成型》 面積:7,114.32㎢ 総人口561,321人(2019年10月現在) 国立大1、公立大1、私立大6、、私立短大1、国立高専1 【フェーズ1:ネットワーク形成以前】 1)高等教育機関間の情報共有なし。 2)対応件数は増加し、障害学生支援に対する意識は強くなってきていた。 ↓ ネットワーク形成に間接的な影響を及ぼしている長崎県の課題 1)国立大学1校を除き、小規模校である。県内の中心的都市である長崎市と佐世保市に多くの大学等が設置されているが、都市間の物理的な距離が離れている。 2)専門部署の設置に関して温度差、体制整備の差が徐々に広がっていた。 3)大学コンソーシアム長崎は単位互換、人材育成プログラムを中心とした取り組みを行っているのみ。 【フェーズ2:ネットワーク整備期】 <できごと> ●2017年 「第1回ネットワーク会議」開催 互いの状況や取り組みを知ることで、支援に関するアイディアを生み出し、より良い支援につなげる。資源(支援機器、研修・講習の機会など)の共有。悩んだ際の相談相手づくり。 <ネットワーク化の進展> 1)国立大学の呼びかけ、主導により開催。呼びかけに温度差はあったが基本的に前向き。 2)小規模校の参加の喚起が課題に。 <県内への波及効果> 1)情報交換の機会を設け、より良い支援につながった。悩んだ際の相談相手作りを進められるようになる。 2)資源(支援機器、研修・講習の機会など)の共有。 【フェーズ3:ネットワーク拡充期】 <できごと> ●2018年以降 年に一回の割合でネットワーク会議を実施。関係構築、具体的な取り組みについての情報共有などを継続的に行う。 <ネットワーク化の進展> 1)物理的距離や交通アクセスのため、依然として物理的な参加が全員にとって容易ではない。WEB会議等を利用した在り方も検討している。 <県内への波及効果> 1)初中等教育機関での研修ニーズも増加傾向にある。高等教育機関での障害学生支援が整い、一貫した支援を県内で検討できるようになった。 【将来像】 1)地域への還元/地元の人材育成に協力する。 2)「支援の基礎的な理解や考え方」を繰り返し共有し、浸透させていく。  →対応力を高め共通理解することは地域で連携する強さにつながる。  →職員の参加も大事にしたい(高等教育機関での支援は職員が担う部分も大きい)。 3)初中等教育機関での研修ニーズは増加傾向にある。高等教育機関での障害学生支援が整いつつあるところで今やっと一貫した支援(セルフアドボカシーの醸成等)を検討できるようになってきた。特に高大接続の観点で連携を強めていくことは県内すべての大学等にとってメリットがあるだろう。 4)行政機関との関係づくりを目的(高大接続・就労移行等)をはっきりとさせる形で関係性の構築を目指す。 5)地元中小企業・県教育委員会等他カテゴリーとの連携も模索する。 【長崎県モデルのGood Point】 1)国立総合大学主導ではあったが、各大学での支援ニーズの高まりに応じ他の機関に頼らず独自のネットワーク形成を目指している。 2)地域課題を広くとらえ、人口減や、社会資源の偏在傾向など、地域性を考慮したネットワーク形成を意識している。 3)物理的な距離や交通アクセスの問題を解決するため、Webベースでの新たな交流の在り方を模索している。 長崎県における障害学生支援ネットワーク形成の流れ 1.県概要 ・長崎県人口:約 134 万人(長崎市 42 万人、佐世保市 25 万人、諫早市 13.5 万人、大村市 9.5 万人など) →若者の流出が多く、高齢化が速いペースで進んでいる。 ・高等教育機関:11機関(国立校1校、県立校1校、私立校8校、高等専門学校1校) →国立大学1校を除き、小規模校である。 →県内の中心的都市である長崎市と佐世保市に多くの大学等が設置されているが、都市間の物理的な距離が離れている。 ・大学コンソーシアム長崎:単位互換を中心とした取り組みを行っている。 2.ネットワーク形成前の状況 ・各機関独自に取り組んでおり、互いに何をしているのか全く共有されていない。 ・障害学生支援に関して、専門部署を設置する等の積極的な取り組みを行っているところもあるが、体制整備の差が徐々に広がってきていた。 →一方で、各校で障害学生への対応件数が増えており、障害学生支援に対する意識がじわじわと強くなっていた。 3.ネットワーク形成時の状況 ・ネットワーク形成時の目的 →お互いの状況や取り組みを知ることにより、支援に関するアイディアを生み出し、より良い支援につなげる。資源(支援機器、研修・講習の機会など)の共有。悩んだ際の相談相手づくり。 ・国立大学が呼びかけ、場所・日程を調整し、2017年に第1回ネットワーク会議に至った。 →呼びかけに対して温度差はあったものの、基本的に前向きに捉えているようであった。 →特に小規模校だと強いニーズがないと参加のモチベーションが得られにくい。 4.ネットワーク形成後の状況 ・2017年に発足し、年1回のペースで実施。 →地方文化的な背景(国立大学が中心的役割をより強く期待される)も含みつつ、専任教員の存在や場所等の物理的資源の関係上、自然と国立校担当者が中心となっている。 →1 回目はお互いの紹介を行い、関係性の構築を図った。2 回目は各校の具体的な取り組みについて情報共有を行った。 →物理的距離や交通アクセスのため依然として物理的な参加が全員にとって容易ではない。WEB会議等を利用した在り方も検討している。 ・県ネットワークの取り組みの方向性 ①「支援の基礎的な理解や考え方」を繰り返し共有し、浸透させていく。 →本人や保護者、高校や他機関へ各大学がどう説明すればいいのか、どう対応すればいいのかを共通理解することは地域で連携する強さにつながる。 ⇔全国ネットワーク(AHEAD JAPAN等)は先駆的知見や事例の議論共有の場 →職員の参加も大事にしたい(高等教育機関での支援は職員が担う部分も大きい)。 ②「地域への還元/地元の人材育成に貢献」していく →高等教育機関だけのネットワークだけでなく、一貫した支援を行うために、他のカテゴリ(地元中小企業・県教育委員会)とも繋がれるものを目指していく。 …他の教育機関 初中等教育機関での研修ニーズは増加傾向にある。高等教育機関での障害学生支援が整いつつあるところで今やっと一貫した支援(セルフアドボカシーの醸成等)を検討できるようになってきた。特に高大接続の観点で連携を強めていくことは県内すべての大学等にとってメリットがあることだろう。 …行政とのかかわり いくつかの関係機関とは少しずつ関係を作っているが、行政機関は目的(高大接続・就労移行等)が明確にないと、関係性を構築するきっかけが生まれないことを実感している。 公開:2020年3月 作成:京都大学HEAP