2019年12月19日『ひと呼吸スピンオフイベント』を開催しました。 あしあと:ひと呼吸スピンオフ企画「私たちについて語り合うためのミーティング」 『ひと呼吸』は2019年1月からの1年間で7号を発行してきました(年度内にあと2号発行予定です)。自分たちでもなかなかのペースだったと思います。まだ発行をする前のミーティングでは、ニュースレターとして、日々の業務に役立つ情報を届けようということも視野にありました。ところが話し合いを進めていくうちに、だんだんと「人」に焦点をあてたものにしたいということになっていきました。それは、まだ定まり切っていない障害学生支援という分野で、その輪郭を浮かび上がらせるためには、いまここに関わる人たちから話を聞いてそれを私たちなりに解釈し文章にしていくのが良いのではないかと考えたからです。そして、そのいまだ定まっていないことがらをそのまま読み手に伝えたいとも思いました。みなさんがこの『ひと呼吸』をどんな風に受け取るのか、そうしたことにも関心があったからです。 ただそうは言っても、みなさん忙しいなか早急に答えを探し出すのではなく、まずは一息ついて、これまでを振り返ったりこれからを眺めたりすることから始めようという思いをタイトルに込めました。またそのタイトルとともに浮かび上がってきたのが、表紙にも掲載しているリード文です。 私たちの日常。それは多くの営みの連なりである。 普段、それぞれの行為の意味を考えることは少ないが、ふと立ち止まって考えてみれば、そこには偶然と必然が潜んでいることに気づく。呼吸。そのような自然な行為ですら、太古における偶然と必然の産物であったといえるかもしれない。 この『ひと呼吸』が、手に取った人の日々の呼吸(営み)を見つめ直すきっかけとなり、そして、それぞれの日常のなかでの「ひと呼吸(休息と起点)」になれば嬉しい。 私たちはインタビューを通じて、これまで登場していただいたみなさんのいまに、多くの「偶然と必然」が潜んでいることを感じ、それが新鮮な刺激となって、私たちの日々を振り返るきっかけとなりました。そうしたことが『ひと呼吸』を続けていく原動力にもなっていました。 前置きが長くなりましたが、そのようにして始まったこの『ひと呼吸』ですが、紙面に留まらず、2019年12月にはイベントを実施し、30名ほどの支援者のみなさまに集っていただきました。イベントでは「障害学生支援とはなんぞや?」ということを、肩の力を抜いて一緒に考え、話し合いたいと考えていました。 イベントの冒頭、私たちはまず『ひと呼吸』の発行を通じてみえてきた3つのことをお伝えしました。 1.支援者・コーディネーターが自身のことを語るということがこれまでほとんどなかった。 2.支援者・コーディネーターがそれぞれ非常に多様であるということが分かった。 3.先駆的実践者は、不十分な社会状況・環境を前提としている。 特に重視したかったのは一つ目の点で、例えば所属している大学の立場から「〇〇大学として」で話し始めるのではなく、「私は」というところからみなさんに話をしてもらいたいと考えていました。つまり、支援者、コーディネーターの個々に焦点をあてて、それぞれが自分自身について語ることを「開いていく」ということです。まさに『ひと呼吸』としてやってきたことを、それぞれみなさん自身にやっていただくわけです。そうした形で個々が開かれていけば、それぞれ支援者が持つ様々なバックグラウンドや専門性が個々の中で閉じたままにならず、大学の障害学生支援に携わる人たちのなかで開かれ、共有されていくのではと考えました。そのうえで、つまり支援者たちがみな実に多様であり、それゆえに考えの違いや意見の異なりがあることを前提として、「障害学生支援とは?」ということを考えていくことが大切だと考えていました。 正直に言うとイベントがうまくいったのかどうかわからないところがあります。できるだけみなさんに話していただきかったこともあり、一つひとつの話を深めるということがなかなかできなかったと感じています。終了後には様々なご意見をいただきました。いくつかをご紹介します。 「ここで得られたことを意識的に継承していくことが大切なのでは。」 「響くものが確実にあったと思います。知識やスキルはもちろんですが、面白い思考を止めず、チャンネルや引き出しを多く持っていたいと思いました。」 「多様性の一言で片づけるのではなく、『支援とは何か』、『専門性とは何か』について真摯に考える機会があると、よりコーディネーター像が見えてきて、共通理解につながっていくのではないかと感じました。」 これら以外にも多くのメッセージをいただいて、こうした試みをこれからも続けてやっていくことが必要ではないかと感じました。私たち障害学生支援に関わる一人ひとりが自身の言葉で語り、それを互いに聞き合い、また自分たちの考えや行動に戻していくというような場、プロセスとして。 どのような形になるかはわかりませんが、これからも『ひと呼吸』の発刊とともにこうした取り組みを続けられたらと考えています。みなさんのご意見やお考えをこれからもぜひ聞かせてください。 2020年2月14日 ひと呼吸・編集委員会