タイトル:情報保障×テクノロジー HEAP ver.1 (2019.8) 音声情報への情報保障の支援ニーズは聴覚障害学生だけでなく、さまざまな障害種に広がってきています。情報保障の方法は手書きノートテイク以外にも多様な方法があります。学生の個々のニーズに対して最適な方法を検討するために、支援者もさまざまな方法を知っておくとよいでしょう。その際、テクノロジーをうまく活用することで、提供範囲を広げられる可能性がみえてきます。 1)自分で聞き直して情報を補完する 自分でノートを取りたいけれど、集中が長時間続かない・聞き漏らしが多い場合、後から必要な個所を聞き直すことで情報を補完できるケースがあります。 ■筆記入力:ペンに小型カメラとマイクが内蔵されていて、書き込みと音声の時間が同期するようになっています。 例)スマートペン ■キーボード入力:キーボード入力と音声の時間が同期します(例.Onenote)。 ※ノートアプリによって、「録音データの保存は可能だが、時間との同期はできない」等の仕様の違いがあります。 ■タブレット:いくつかのノートアプリには音声と入力(筆記)を同期する機能があります。 2)支援者を配置して情報を補完する 支援者を配置して情報の補完をする必要がある場合、どのような情報を保障するか支援者と利用者で共通理解をすることで質が向上します。 ■PCノートテイク ・単独入力: ①連係入力ソフトの活用 ②ミラーリングの活用(例.Miracast、Quick Time Player) ③ドキュメント共有サービス(例.Googleドキュメント、Dropbox Paper、Word Online、iCloudメモ) ・連係入力:連係入力ソフトによる連係入力。(例.IPtalk、T-TAC Caption) 参考>「パソコンノートテイク導入支援ガイド やってみよう!パソコンノートテイク 指導者版」(PEPNet-Japan作成) 3)音声認識を活用して情報を補完する 多言語対応ができることも魅力の一つです。障害者支援の文脈を超えて、音声認識システムの開発は進んでおり、数年後は更に認識精度が向上している可能性もあります。 ■音声認識システム:いくつか紹介します。 ・UDトーク??:修正インターフェイス、辞書登録機能が優秀です。トークルームを作成することができて、汎用性も高いのが特徴です。 ・音声文字認識(Live transcribe):認識結果の表示が非常に早いのが特徴です。現在はAndroid Appのみ公開しています。 ・Googleドキュメント:音声文字認識と同様に結果の表示が早く、別の端末からの修正も可能です。Google Chromeから起動できればどのOS端末からも使用可能な点も特徴です。 <Tips> 誤変換が多くて使えない…精度は高まってきていますが、“何もしない”で完璧な情報にはなりにくいのが現状です。①外部マイクを適切に使用する、②話し手に機器の説明を予め行う、ことで認識率が向上する場合があります。一つの方法にこだわるのではなく、修正者を入れたり、他の方法と組み合わせることも検討するとよいでしょう。 4)自分の聴力を活用して情報を補完する できる限り聴力を活用したいというニーズは少なくありません。今後、医療や補聴技術の発達で、そのニーズは増えていくかもしれません。 ■環境調整:話者の口元が見えやすい座席配置、騒音の少ない教室環境、参加者の相互理解 <Tips> 情報保障がうまく機能しない…優れた情報保障(者)を以てしても、複数名が同時に話す、当事者間でしか理解しえない文脈がある等、情報保障(者)が機能しない場合があります。場のコントロールをする司会者のような存在を配置することも工夫の一つです。 ■補聴援助システム 補聴器/人工内耳の有効範囲(約3m)以上の補聴には補聴援助システムの利用が効果的です。発信機と受信機の組み合わせで使用します。